2011/02/10


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「外へ行って暗闇の中で坐る必要はありません。しかし、もし星が見たいのであれば、暗闇が必要なことはわかるでしょう。けれども、星はそれを必要としないし要求もしません」


「わたしは、思い出や経験といったものにいっさい頼らずに空想する。そういうものがもてないからだ。きみは、爆発で足を失った人間でも見るような目でわたしを見ている。だが、わたしにはもともと足はなかったんだ」


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「しかし、わたしには罪がない。そもそもある人間に罪があるということが、どうしてありうるんです。わたしたちは、誰も彼もみな同じ人間です」「そのとおりだ。しかし罪ある者は、みんなそういうのだ」



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「日のあるうちから暗闇について考えておかなければならない。だが、迷子の終わりは迷子の状態からは導き出せない。けれども、そんな出口から迷路を逆算するような真似はよそう。迷路の安全装置としての性能はあらかじめ保証されている」


「幾本かある足の中から一つ、あるいはそれ以上を切断しても、残りの足を使ってそのつど新しいやり方で歩み進むだろう。たとえすべての足を取り去られても、顎まで使って、あるいは胴体を軸にして転がるように運動を続ける」「ええ、足がなくても足はつくられる。それが歩行です」


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「残りものは残さず食べました。わたしが思い出しているからそれは起こったのでも、それが起こったからわたしは思い出しているのでも、どちらでも同じことです。数えきれないほどたくさんの証拠があるから、何の証拠もいらないのです」



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「暗闇が見たくて暗闇の中にいるのに、暗闇はいっこうに見えない」「それはそうでしょう。暗闇の中にわたしたちではないひとはいませんでした」


「しかし、わたしからみたらそれは、五体のうちの足一本とか、手一本とか、何かが足りないという、それだけのものにすぎません。あとは全部揃っている。わたしの場合、足が一本ないということは、足だけではないんです。どこか一部分がないというのじゃなくて、全部がない。すべてがないうえに、手が一本なかったり、足一本なかったりするのです」


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「きみは、思い出や経験といったものをいっさい失った人間でも見るような目でわたしを見ている。重さがあることは物体の罪だろうか。それとも物体であること自体が罪であるなら、重さがあることは罰だろうか。わたしが罪を知るには罰がなければならない。しかし、わたしに罪があるためには、罰を受ける必要はないのだ」



Leftover

(Quid juris)